こんにちは、モアナ母さんです。
我が家は、将来有望なAIカンパニーへの投資会社「ソフトバンクG」の株を2000株保有しています。
世界最先端のビジネスモデルを勉強するための、ソフトバンクビジョンファンドシリーズ。
12社目の今回は、アップサイドフーズ(Memphis MeatsからUpside Foodsに社名変更)。
ビル・ゲイツとリチャード・ブランソンも総額1700万ドル(約18億5400万円)投資しています!
世界人口が100億人に迫ると言われている2050年、肉の需要は今後30年間で2倍になると予想されています。この需要を満たすには、現在の生産方法では「持続不可能」とも。
Upside foodsは、細胞培養肉を製造するスタートアップ。
今年中に初の消費者向け製品であるチキンを市場に投入する予定です。
【Upside foodsの基本情報】
企業名 | Upside foods |
事業内容 | 細胞培養肉の製造 |
創業 | 2015年にサンフランシスコベイにてUma Valeti(循環器内科)とNicholas Genoveseによって設立 |
CEO | Uma Valeti(創業者兼) |
評価額 | 不明 |
創業者は、もともとはお医者さんだったの?
Uma Valetiは、人の健康にポジティブな影響を与えたいという想いから循環器内科になりました。2005年、当時の勤務先(Mayo Clinic)で、心臓の筋肉組織を幹細胞で修復する研究が行われたとき、幹細胞が動物の筋肉組織や肉を育てるのにも使えると考えたことが転機となりました。それまで、肉食中心ではあったものの、肉を食べることで発生する食中毒に悩まされていたり、屠殺場での汚染にうんざりしていたこともあって、医者になった使命延長線上にこの会社の設立があると考え、創業に至りました。1)
“I loved eating meat, but I didn’t like the way it was being produced(肉を食べるのは好きだったが、その製造方法は好きではなかった)”と語ったUma Valeti。まさに、それを解決するための会社を起業したんだね。
人工培養肉の可能性は??
培養肉の製造方法
「培養肉」は、動物の細胞を体外で培養して増やし、増やした細胞で組織形成して得られた肉を指します。
下記の図のようなイメージですね。(参考文献2)より引用)
- まず、農家が育てている生きた動物から筋肉細胞や脂肪、結合組織を採取する。
- 細胞片をバイオリアクターにかけ、細胞分裂→増殖させる。(培養液には、タンパク質、脂肪、ホルモン、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどを配合)
- 細胞が融合し、小さな組織へと分化。(タンパク質と脂質を中心としたシンプルな配合の培養液が用いられ充分な大きさになるまで育てられる)
- 筋組織の塊を集めて成形し、ミンチにする。
細胞からミンチができちゃうんだ!でも、コストはかかりそうだね(・ω・;)
それを上回るメリットは、なんだろう?
培養肉のメリット
ローエネルギーコスト(人口増加・食料増産への対応)
CO2、水、土地が少なくてすみます。
実は、人間は、牛に使われる原材料の約3%しか受け取っていません。農家が懸命に育てたトウモロコシや大豆で牛を飼育しても、その97%は水や大気中に温室効果ガスとして排出されてしまいます。
森林伐採やメタンガスによる地球温暖化への影響を軽減できる
人工培養肉は、飼料や水に加え広大な放牧地を必要としません。
いま、食肉を増産するための放牧地を確保するために、アマゾンでは違法な森林伐採が行われています。また、飼育されている家畜の糞尿から排出される大量のメタンガスは、地球温暖化にも悪影響を与えています。
安全性が高い
動物から人間へのウイルス感染の原因となる従来の農業に伴うリスクを回避できます。
畜産では、家畜に抗生物質を投与して飼育していても、常に耐性菌とのいたちごっこ状態にありますが、培養肉なら、そもそも抗生物質を投与する必要がないのです。
倫理的観点
動物の生命を奪ってつくられた食肉のうち、かなりの量が賞味期限切れなどの理由で食べられることなく捨てられていることは、意外に知られていません。
「フードロス」といわれるこの問題、ウシに換算すると全世界で1年間に7500万頭分もの食肉が廃棄されているといわれています。
栄養価の調整が可能!?
人工的に脂肪やコレステロール値の調整ができれば、心疾患や糖尿病などのリスクを下げることもできるかもしれませんね。
廃棄物が出ない
細胞培養のプロセスでは、科学者たちは必要なものだけを生産し、脳や骨、皮などは省くことができます。環境問題の解決にも、つながりますね。
コストの問題はあれど、肉の供給が需要に追いつかないことや、持続可能性の観点からは、必要とされる技術だと思います。
【Upside foodsの強み】
Upside foodsは、細胞培養肉という一見不可能と思われるアイディアを追求した、最初のスタートアップです。
「代替肉」をビジネスとする企業は他にもあります。しかし、例えばBeyond Meat社の製品は植物性タンパク質です。
培養肉は、豆腐やジャックフルーツを使った代替肉とは違います。Upside社の製品は、動物の細胞から完全に培養され、「動物を飼育することなく培養された本物の肉である」という点が特徴です。
肉っぽいか、肉そのものか、ということね。
従来用いられてきた細胞培養液には牛の胎児から抽出したウシ胎児血清を用いるため、非常にコストがかかっていましたが、Upside foodsは、ウシ胎児血清を用いず、非動物由来の成分による成長血清の生成に取り組んだ結果、生成に成功しています。
ビジネスモデルはあまりオープンにされてなくて、どこでAIが活用されているかわからなかったよ。味に対する培養液の組成のところなのかなぁ?
ソフトバンクビジョンファンドの投資先だから、どこかでAIを活用しているビジネスモデルのはずだけど、今は企業秘密なのかもしれないね。
一番知りたかったビジネスモデルは、残念ながら、オープンソースを見つけられることができませんでした。今後、ウォッチしていきたいと思っています。
【Upside foodsの将来性】
今後30年間で2倍になると予想されている肉の需要を満たすには、現在の生産方法では「持続不可能」だといわれている中、Upside foodsは、1兆4,000億ドルともいわれる世界の食肉市場の一角を占めようとしています。
「人道的で、持続可能な美味しい製品」という需要に対しては、人々の食生活に革命をもたらす可能性がありますね。
今から20年後の世界は、Upside Foodsによって、全く違ったものになっているかもしれません。
【Upside foodsの課題】
コストが最大の壁
人工肉のコストは先駆者であるモサ・ミートの人工肉バーガーは1個当たり25万ユーロ(約3000万円)だったそうです。
その後、当時のメンフィス・ミーツ(現Upside foods)社は、1ポンド(454g)あたり、2016年に1万8000米 ドル(193万円)、2018年1月時点で2,400米 ドル(25万円)程度まで下げました。
この3年でどこまで下げられたんだろう?
法的規制が不透明
今のところ、実験室で培養された肉の販売を許可しているのはシンガポールだけです。
シンガポールで世界初の細胞培養鶏が食用に承認されています。
現在は、共同で規制することに合意した米国農務省とFDAの承認待ちの状態です。これら規制当局の判断が、Upside foodsの製品が市場に登場するタイミングに大きな影響を与えます。
「人工肉」に対する、ネガティブな先入観の払拭
個人的には、「培養された肉」というのが、なじみがないだけに、普通の肉のように口に入れることに躊躇しそう・・・
しかし、これは先入観に過ぎません。
むしろ培養肉という技術なしには、食肉の確保が難しくなる可能性を考えると、人々の常識を覆す大きなチャレンジですよね。
所感
Memphis meaatsから、Upside foodsへの社名変更は、「大好きな食べ物を地球に優しいものにしたいという私たちの情熱と可能性を伝えるものです」と、CEOのValentiは語ります。
培養肉になじみはありませんでしたが、技術によって、「大好きなお肉を食べる喜び」と「動物を屠殺することや環境破壊をすることへの罪悪感」を切り離し、安心してお肉を食べられるということにビジョンが、この会社から伝わってきます。
初の消費者向け製品であるチキンを今年中に市場に投入する予定です。(規制当局の審査待ち)
まずは鶏肉なんだね、いくらで売られるんだろう??
あとは味!本当においしいのであれば、ぜひ食べてみたいね。
次はどのソフトバンクビジョンファンド投資先の企業を紹介しようかな?
アロハ~♪
参考文献
1) “Uma Valeti”, https://golden.com/wiki/Uma_Valeti-8AR8ZX8
2) “米国における食肉代替食品市場の現状”, 農畜産業振興機構 調査情報部, 2019年10月号. https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000777.html
3) Tammana Begum, “Would you eat lab-grown meat?”, Natural History Museum, 29 April 2021. https://www.nhm.ac.uk/discover/would-you-eat-lab-grown-meat.html
4) 楽しく悩んで、食の未来を変える ~「培養肉」研究の最前線~. Oct24,2019. < https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/sciencewindow/20191024_w01/>
5) Pan Demetrakakes , “5 Disruptors to Watch in the Food Industry: Memphis Meats”, FOOD PROCESSING, Jul 8,2019. https://www.foodprocessing.com/articles/2019/disruptors-to-watch-memphis-meats/
6) Jon Card, “Lab-grown food: ‘the goal is to remove the animal from meat production’”. The Guardin. Jul24, 2017. https://www.theguardian.com/small-business-network/2017/jul/24/lab-grown-food-indiebio-artificial-intelligence-walmart-vegetarian
7)Memphis Meats rebrands as Upside Foods as plans to commercialize cell-based chicken go into high gear. May17,2021. <https://www.foodbusinessafrica.com/memphis-meats-rebrands-as-upside-foods-as-plans-to-commercialize-cell-based-chicken-go-into-high-gear/>
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